聖籠町内の3つの小学校では、2024年度から体育の水泳授業が、
外部のスイミングスクールの屋内プールで行われるようになりました。
民間の屋内プールを借り、指導を外部委託する水泳授業にはいろいろなメリットがあり、
児童や先生からもおおむね好評のようです。
校外プール水泳授業のメリット
聖籠町内の3小学校(蓮野・山倉・亀代)の2024年度の水泳授業は、
・2024年5月~2025年1月の間
・1年生から6年生までが3日間計6時間
聖籠町のお隣の新発田市内のスイミングスクール「T&S新発田スイミングスクール」
で行われます。
3年生を例に挙げると、10人1グループの4つの班に、スクールのコーチと
学校の先生が1人ずつ付き、水泳はコーチがメインとなって指導します。
メリットとしては、
子どもたちの泳力が伸びるほか、先生方の負担減、またプールの維持管理費用と比べても
節約になりそうなどがあります。
子どもたちの泳力アップにつながる
学校の先生だからと言っても、先生によって専門分野は異なります。
泳ぎを専門家から教わることで、子どもたちの泳ぎの力=泳力アップに
つながるというのはうなずけます。
わかりやすい指導法は、教わる子どもたちだけでなく担任の先生自身も
「勉強になる」でしょう。
水泳授業に関する準備の負担軽減
水泳授業を行うにあたって、教員は自校のプールに水を張る作業や
消毒剤の投入、清掃など、事前の準備や後片付の作業がいろいろあり、
これが負担になっているという指摘が以前からありました。
他の都府県では、先生がプールに水を張ったことを忘れて水道を止め忘れてしまい
大量の水が流出、水道料金が高額になってしまったという事例があります。
先生方もいろいろな業務を同時に抱えることも少なくなく、
また水泳授業がある日は朝早く出勤するなどで、教員の業務負担減が
望まれていました。
今回聖籠町のように、外部に水泳指導を委託することで先生の負担が
ぐんと減ったことは間違いないようです。
天候に関係なく実施
夏場のプール授業では数年前まで、梅雨が終わらず雨の日が続いたり、
気温や水温が低いと実施できないということがありました。
またここ数年は、暑すぎてプールサイドにいられないなど猛暑の影響が顕著
でした。
暑すぎて水泳授業ができない時代が来るなどとは、夢にも思っていません
でしたが、こうした天候による影響を考慮し、屋内プールでの水泳授業に
変えることは、時代の変化に合わせた方法でとても良いことだと思います。
費用面でも節約?
屋外プールでの水泳授業の実施に当たり、気になるのが費用の面です。
スイミングスクールへの委託料や移動の際のバスの貸し切り費用などで、
約1700万円の予算を町では組んでいます。
一方従来通り各小学校設置の屋外プールをずっと使い続けた場合、
水道代や消毒薬剤費が年間で約190万円(1校当たり)かかるほか、
プールの老朽化に伴う建て替え費用は、1校当たり2億円ほどかかるそうです。
また経年劣化などで必要な定期的な改修工事の代金も合わせると、
30年間外部委託を続けた場合と、自校のプールを使い続けた場合の金額が、
ほぼ同じになると町では見ています。
デメリットもある
上記では水泳授業を外部委託するメリットを挙げてみましたが、
デメリットはやはりあって、「移動時間がかかる」ということです。
バスでの移動時間は約40分かかり、水泳授業を行うことで
他の教科の授業時間が減ってしまうかもしれないという心配があります。
聖籠中学校では水泳授業がない
聖籠町内の3小学校では自校のプールがあり、水泳授業は行われてきましたが、
聖籠中学校は現在の新しい校舎を建設した時、プールは設置しませんでした。
よって実際にプールで泳ぐ水泳授業はなく、水泳部などの部活動もありません。
新潟県内の小中学校ではプールの老朽化が課題に
新潟県内に限らず全国的にも、公立小中学校に設置している校内プールは
老朽化が大きな課題となっています。
新潟県内では、小学校は全体の約1割、中学校では約4割の学校で
自校のプールが使用できない状態にあるとされています。
プールの大規模改修には数千万円の費用が掛かるため、各自治体の負担が大きく、
また教員の業務軽減も考慮される時代になっており、
少子化が進む現在はプールを改修するよりは、外部のプールを使用して
水泳授業を行う方が現実的な方法かもしれません。
ただし、小規模の改修であれば自校のプールを使い続ける予定という
学校(新潟市内など)もあるようです。
水泳授業っていつから始まったの?
小中学校での水泳授業は、1955年(昭和30年)に起きた
「紫雲丸沈没事故」がきっかけです。
1955年5月11日、香川県と岡山県を結ぶ紫雲丸(しうんまる)は、
島根県松江市の小学校の修学旅行生と付き添いの教員を乗せて運航中でしたが、
他の船と衝突して沈没。
児童と教員併せて168名が犠牲となった、痛ましい事故でした。
紫雲丸の水難事故を契機に、水難事故防止を目的とした水泳授業が
全国の小中学校で行われるようになりました。
学校のプールを設置する動きは1964年(昭和39年)の東京オリンピック
開催に伴い、「スポーツ振興法」が制定されたことから広がり、
学校施設の建設ラッシュと合わせて、プールも同時に設置されるようになりました。
当時は第2次ベビーブームのさなかであり、子どもの数が大変多かったことも
要因の一つです。
現在残っている公立小中学校のプールはこのころ建設された築50年以上のもの
が多く、プールサイドのひび割れやゆがみなどの劣化が問題となっています。
*ここまでは、新潟日報2024年6月30日朝刊の地域面を参考にしました。
水泳授業の安全対策はどうする?
水泳授業で気になるのが、子どもたちの安全対策です。
高知市のある小学校では、小4の児童が水泳授業中におぼれてなくなるという
痛ましい事故が起きています。
この小学校ではプールが故障して使えなくなったため、代わりに近くの中学校の
プールを借りて水泳授業が行われていました。
小学校のプールと中学校のプールでは当然、水深が異なります。
児童がおぼれた箇所のプールの深さは約130cmで、児童の身長よりも深かったそうです。
また児童が通う小学校のプールの最深部よりも約10cm深かったということです。
事故があったとき教員が3人監視に当たり、うち2人は泳ぎが苦手な児童のグループを
水の中から見守っていました。
この時児童は36人水泳授業に参加していましたが、これだけたくさんの人が
一緒にいたにもかかわらず、誰もこの児童がおぼれていたことに気づかなかったのです。
「子どもは静かに溺れる」は本当!?
「子どもは静かに溺れる」
という言葉を聞いたことはありますか?
子どもは水の中でおぼれるとき、
・自分がおぼれているという状況がよく理解できていない
また
・息をするのが精いっぱいで声を上げることができない
ということで「静かに溺れる」と考えられており、「本能的溺水(できすい)」
と呼ばれます。
水泳授業での安全確認は「バディを組む」
先生方が3人監視についていても、「子どもは静かに溺れる」ということもありうる
と考えると、監視を先生方に頼るだけでは限界があるかもしれません。
そこで安全確認対策として専門家が指摘するのが、
児童に2人1組の「バディ」を組ませて、お互いの状況を確認しあう方法で、
「バディシステム」と呼ばれています。
私が小学生の頃、水泳授業では「隣の席の人とバディを組んで」
とよく先生が指示をしていましたが、まさにこのことだったのだなと思います。
まとめ
聖籠町だけでなく全国的にも、プールの老朽化、自治体や教員の負担減、
少子化など様々な理由から、外部施設を利用した水泳授業の動きが進んでいます。
少子化解消のめどは全く立っておらず、さらに少子化高齢化が進むものと
予想されており、当面かかる費用負担などを考えると、致し方ないのかもしれません。
ただ子供たちが外部委託の水泳授業を通して、正しい泳ぎ方や水泳の楽しさを
知ることができたら、これはうれしいことだなと個人的には思っています。